オレムス、プリマエ・クラシス

オレムスのブドウ畑は大陸性気候で生育しますが、ブドウの各品種にまたとない豊かな香りをもたらすのは、まさにこの寒暖差の激しい気候条件による影響です。所有しているブドウ畑のほぼ半分はフルミント種の畑です。この品種は白の辛口ワイン「マンドラス」の醸造用、また当社の各種スイートワイン用に使われてます。

ハールシュレヴェリュ種（シナノキの葉の意）はまろやかさとフローラルの繊細な香りをもたらし、一方シャルガムシュコタイ種（イエローマスカット）はオレムスのレイトハーベスト（遅摘み）ワインに独特のアロマを与えます。ゼタというブドウは、ワインの力強さを引き立てます。

昔ながらの伝統に敬意を表し、ブドウネアブラムシ（フィロキセラ）の発生前（1880年）にはよく栽培されていた品種、クーヴェースルー種（大粒のブドウ）とゴヘー種を再び栽培しました。しかし、作付面積はそれほど大きくありません。

12月、冬が訪れると、ブドウ畑を極寒と凍てつく強い風から守ってくれるのは雪だけです。春の間、何度か霜が降りることがあり、とりわけ丘の麓に植えられたブドウの木に悪影響を及ぼすことがあります。5月になると気温が一気に上がり、ブドウは目に見えて育ち始めます。夏は気温が高くなりますが、初夏の暑苦しさは6月の雨で和らぎます。蒸し暑い夏の間、霰（ひょう）が降るのも珍しくありませんが、8月は通常からっとした暑さです。秋は長く、秋口に湿気が高くなるのが特徴です。その後、空気は乾燥し、10月になると夜は大分涼しくなります。晴れた暑い日の翌朝には霜が降り、11月中旬までこの現象が続くことは珍しくありません。このような秋の天気は、ブドウの房の貴腐化を促す大きな味方となります。また、この地方を流れる河川、異なる山が作り出す地形、土壌や独特の森林の多様性は、結果的に、オレムスのブドウ畑の区画同士に無視できない細かい気候の差をもたらしています。

ここでは、常にマンドラス ドライ・フルミント用のブドウの収穫から始めます。収穫は、果実が完全に熟し、しかも房の日に当たっている部分が熟れ過ぎている位になると始まり、唯一、健全で黄金色に色づいたぶどうの房だけを収穫します。その後、数日間、時には数週間、ブドウが熟しすぎの状態となり、ボトリティス菌、つまり貴腐がブドウに作用するのを待ちます。

所有地内で栽培されるブドウの各種品種の熟成時期の差を利用し、区画ごとにブドウ畑を見て回り、一部の果粒に超完熟の兆候が現れ、他の部分は貴腐化が生じているブドウの房を探します。これらの房から、とても味わい深く密のように甘い搾汁が得られ、この搾汁からワイン「オレムス・ベンディミア・タルディーア」が生まれます。

アルコール度が高い涙のあるワイン「アスー」用には、ブドウの木から一粒一粒、貴腐果を厳選します。収穫には大小2種類の容器を利用しています。小さめの容器は貴腐果用、大きめの容器は房の残りの部分用です。収穫に要する人員と一緒に、必要であれば何度でもブドウ畑を移動していきます。

収穫にあたり、トカイの典型的な気候「小春日和」を頼りにしています。ちなみに、ハンガリーではこのような気候を「老婦人の夏」と呼んでいます。夜は冷え込みますが、空気が乾燥して風の強い日には、まだ数時間、太陽が輝きます。